
第13回国際統合医学会学術集会を、永田勝太郎会頭のもと、2011年10月22日(土曜日)、東京都新宿区の新宿明治安田生命ホールにおいて開催できますことを、皆様方に深く感謝申し上げます。
さて今回のメインテーマは「パーソナライズド・メディシンの実践―精神・生存哲学的視点からの提言―」といたしました。パーソナライズド・メディシンの実現にとって肉体と心の統合は原点です。生きる意味を見出すことや人生の意味、死生観などが肉体や健康にも大きく影響を及ぼすことは、欧米では広く議論されてきています。
本学術集会では、日本でも臨床のさまざまな過程において取り組み始めている、病に対する精神・哲学的アプローチについて、活発な議論が展開されることを確信しております。
統合医学とは、個の医療を実現するために、エビデンスに基づいた様々な治療と患者さんの意向や希望も入れ融合させ、その人その人に最適な医療を学問として診断法や治療法を確立し、誰もが理解しその恩恵を受けられるように体系化することです。それは、次の5つの体系になります。
第13回国際統合医学会学術集会が、この体系の原点である肉体と心の統合へ立ち返り、統合的、包括的な医療医学へのパラダイムシフトをさらに加速させる実践の場となるよう力を尽くす所存です。
本学会員の先生方の多くのご参加はもとより、これからの日本の医療を担う若い医師やコメディカル、学生をはじめ医療に携わる幅広い方々のご参加を心よりお待ちしています。

この度、第13回国際統合医学会学術集会の会頭を勤めさせて頂くことになりました。周知のように、本会は、医師や看護師のみならず、多くのコメディカル、福祉、教育等、健康に携わる幅広い分野の方々が集い、情報を交換し、市民の健康創成・疾病の予防、診断・治療など、生命科学の発展に寄与するために開かれる市民参加型の学会です。
現代医学単独では患者のQOLを充分満足させられないことは市民一人一人がその医療体験から熟知しています。したがって、モア・ベターを求めての統合医療は今日必須の考え方です。
そうした文脈の中、今回のメインテーマは『パーソナライズド・メディシンの実践 ― 精神・生存哲学的視点からの提言 ―』としました。
今日、私たち日本人を巡る環境は著しく変化を遂げています。バブル以降、連綿と続く不況、忘れもしない3月11日の東日本大震災、未解決の原発事故、節電・・・数え上げれば切りがありません。「未曾有」「想定外」「千年に一度」「前例のない」・・・などの言葉が、マスメディアを交錯しています。価値観の転換を図らねば、生きてゆけません。
こうしたストレスを文明論的ストレス(誘発ストレス)といいます。
しかし、「にもかかわらず」、私たち市民は生きてゆかねばなりません。では、どう生きたらよいのでしょうか。
誰もガイドラインを示してくれません。
こうした文明論的ストレスをいかに生きるか多くの学者が混迷の議論を続けています。残念なことに、悲観論が主流を占めています。
しかし、歴史の中には、今回の一連の事象以上に市民を不幸に陥れた事実があります。そうした苦難を先人はいかに乗り越えたか。それを学ぶべきでしょう。
20世紀の世界に大きな影響を与えたビクトール・フランクル博士はまさにそれを実践した方でした。アウシュビッツの強制収容所を生き抜き、戦後、実存分析学(logotherapy and existential analysis)を創り上げました。この学問は医学のみならず、政治、経済など国際社会に大きな影響を与えました。
今回、私たちの招聘に応じてくれたウイーンのビクトール・フランクル研究所理事長アレキサンダー・バシャーニイ博士は、この大きな問題に対する答えを教えてくれるかも知れません。
必要なのはガイドラインやノウハウではなく、本質的な世界観、人間観です。すなわち、哲学です。
「普遍性の上に個別性を」とは、前日本医師会長だった武見太郎先生が晩年言われた言葉です。パーソナライズド・メディシンはその個別性を現します。個別性は患者固有の身体・心理・社会・実存的特異性の理解の上に成り立ちます。こうした視点は統合医療に必須です。統合医療を通して、全人的医療(comprehensive Medicine)に向かうことができます。
新しい時代の医学がそこにあります。本学会を通じ、生命哲学を考え直し、私たち一人一人が「生きることの意味」を再考する機会になったら本学会は成功したといえるでしょう。さらに、今日の文明論的危機を乗り切る知恵を学べたら幸いです。
そうなることをこころから信じます。