2018年11月18日(日曜日)に、第24回国際個別化医療学会学術集会を開催させていただくことになりました。今学術集会のメインテーマを“腸内フローラと個別化医療”といたしました。
解析技術の進歩により、腸内細菌叢(腸内フローラ)の構成は、年齢や遺伝的背景、生活スタイル、食事などの要因で個々人によって大きく異なることが明らかになってきています。例えば、前立腺癌は、罹患率に世界的格差があり、その要因として、食事環境の差異は以前から論じられてきたところですが、近年、この関わりにある種の腸内細菌が加わってきたのです。
癌免疫治療の分野では、現在の最大のトピックは、免疫チェックポイント阻害剤です。単に効果の側面だけではなく、その高価な薬価が社会的課題とさえなっています。さらに、本剤は、奏功例の割合が比較的低く、有効なバイオマーカーの開発が急務であることが各方面から指摘されていながら、未だに“これだ”といったものが世に出ていません。興味深いことに、腸内フローラが、免疫チェックポイント阻害剤の治療効果に関与しているらしいとの治験が相次いで著名な科学雑誌に発表されるなど、話題を呈しています。
今後、腸内フローラの研究の発展が、ヒトの疾病発生機構の解明や患者の転帰、さらには、薬剤の効果予測を可能にし、個別化医療の構築に重要な役割を担うことが期待されます。
最近の医療技術の進歩は、目覚ましいものですが、一方では、医療における格差を今まで以上に深刻化させています。国連が発表した17個の持続可能な開発目標 (SDGs; Sustainable Development Goals) の一つに、#3; Good Health and Well- being がありますが、この達成目標の対象者はすべてのヒト、すべての年齢です。一言で言えば、Universal Health Coverage (UHC)です。しかし、医療技術の高騰化は、一方では、このUHCの実現をさらに妨げる要因になっています。この乖離を埋めるための重要な研究の一つが、個別化医療の構築です。今回の学術集会では、個別化医療の構築に向けてUHCの観点からも議論を深めていきたいと考えています。
東京芝大門の地、日本赤十字本社ビル大会議室で、皆様にお会いできますことを楽しみにしております。
2018年11月18日(日曜日)、第24回国際個別化医療学会学術集会を、東京大学大学院情報学環・学際情報学府「総合癌研究国際戦略推進」寄附講座 特任教授 赤座 英之 会頭のもと、東京都港区 日本赤十字本社ビル大会議室において開催できますことを、皆様方に深く感謝申し上げます。第24回学術集会はメインテーマを「腸内フローラと個別化医療」といたしました。
ヒトの腸内細菌叢は、年齢などの生理状態や食事をはじめとする生活習慣・生活様式などの環境的要因によって変化し、一人ひとり異なることが明らかになっています。ヒトの健康と疾患と腸内細菌との関係性を解明していくことは、多角的視点から疾患に対する新たな予防・治療戦略を描くことを可能にし、個別化医療実現のプロセスに欠かせない研究領域であると期待しております。
赤座 英之 先生が企画された今学術集会のプログラムは、腸内細菌叢研究の最前線を理解するための必須レクチャーであると認識しています。参加者の皆様の熱く深い議論を期待しております。
多くの会員の皆様のご参加はもとより、これからの日本の医療を担う若い医師や研究者、コメディカル、学生をはじめ医療に携わる幅広い方々のご参加を心よりお待ちしています。