国際個別化医療学会誌

国際個別化医療学会誌
総説
マイルド加温療法の基礎(ヒートショックプロテイン・HSP 70の誘導)と臨床(癌治療への併用)
Induction of heat shock protein 70 by mild hyperthermia and cancer therapy combined with mild hyperthermia
伊藤 要子
愛知医科大学医学部 泌尿器科学講座
ヒートショックプロテイン(HSP)は,熱ストレスをはじめ物理・化学・精神的なさまざまなストレスによって細胞内に誘導され,ストレスによって傷害されたタンパクを修復し,修復しきれないタンパクは分解を促進するなど細胞をストレスから守っている。また,HSPは,タンパクの合成・運搬・分解と蛋白の一生に分子シャペロンとして働いている。マイルド加温療法は,熱ストレスによって誘導されるHSPの生理作用(ストレス防御作用,免疫増強作用,分子シャペロン作用)を利用し,癌を始め様々な疾患の治療,健康維持に役立てる療法である。マイルド加温療法では,加温による自然免疫の増強や血流増加作用はもとより,誘導されたHSPによるNK細胞の活性化を始め樹状細胞の増強,癌ワクチン作用など癌免疫にも関与している。HSPは 大腸菌からヒトまで殆どの生物が生体防御のため備えており,進化的にもしっかり保残されてきた遺伝子産物である。そして非常に魅力的なことに,必要な時に自分自身で容易に増加させることも出来るのである。様々な日常作業は自動化・機械化され,それらから発生する熱量・CO2による地球の温暖化は進む一方,ヒトは労働・運動の減少により熱産生が減少し体温は低下(低体温)し,鬱病は増加しと殺伐とした冷えた時代だからこそ,熱ストレス(マイルド加温)によって増加するヒートショックプロテイン(HSP)が,今一番必要なタンパクであると思われる。
■Key words:ヒートショックプロテイン,HSP,分子シャペロン,ストレス,癌治療
■連絡先 愛知医科大学医学部 泌尿器科学講座 〒480-1195愛知県愛知郡長久手町大字岩作字雁又21
戻る