理事長挨拶

この度、伝統ある一般社団法人国際個別化医療学会の第2代理事長を拝命しました後藤章暢でございます。伝統ある本学会の舵取りを担うにあたり、その責任の重さに身が引き締まる思いです。
本学会は1999年に新しい医学を模索する潮流のなかで、未来志向型の医療を確立しようとして「国際統合未来医学会」が発足し、その後、2000年に第1回学術集会が初代理事長である阿部博幸理事長の下で開催されました。2003年の第4回の学術集会から「国際統合医学会」と改称され、2006年に有限責任中間法人国際統合医学会へと法人化されました。2008年に一般社団法人に移行し、設立より一貫して「個の医療」を目指して活動を重ねてきた経緯より、2011年に現在の「国際個別化医療学会」に改称され、私もそのときに学会顧問として初代理事長の下で学会運営に関わらせていただくようになりました。2012年には学会英文誌「Personalized Medicine Universe」Vol.1をエルゼビアより刊行。その後、初代理事長はモスクワやドイツでの講演等、国際的な連携を精力的に行われました。私自身2013年の第17回学術集会と2021年の第26回学術集会の会頭を拝命しました。2010年に入会させていただき、早いもので15年以上が経ちました。その間、コロナ禍という未曾有の危機も、皆様とともに経験し乗り越えてまいりました。今春、大学を退官し、新たな気持ちで活動に取り組む所存です。
これまで本学会は、患者様一人ひとりの体質や病態に合わせた「最適な医療」の実現を目指し、学際的な研究と実践の場を提供してまいりました。ゲノム解析技術の飛躍的進歩やAI(人工知能)の活用により、かつての「オーダーメイド医療」は今、より精密な「Precision Medicine」へと進化を遂げています。
米国で進められているPrecision Medicineの意図するところは、本学会が推進する個別化医療とまさしく同じであります。次世代シーケンサーがもたらす詳細な医療情報だけでなく、個人の環境・ライフスタイルなどを考慮したあらゆる情報、それらから導き出される最適な薬剤や治療法の選択と確立、さらには個別の疾患予防対策に至るまでの医療イノベーションの実現こそが、個別化医療の目指すところです。
(1)学術集会の開催
(2)セミナーの開催
(3)専門医の育成
(4)学会誌の発行(Personalized Medicine Universe)
(5)教育施設(研修センター)の設立
(6)国民への普及、行政への働きかけ
があります。
これらを継承しながら、私自身の任期中に以下の3点に注力して取り組んでまいる所存です。
(1)多職種連携と学際的交流の深化:基礎研究者、臨床医、薬剤師、栄養士、そして工学や情報科学の専門家が、垣根を越えて対話できるプラットフォームを強化します。
(2)エビデンスの構築と社会実装の推進:個別化医療が「一部の特別な治療」に留まることなく、標準的な医療として社会に定着するよう、質の高いエビデンスの発信と倫理的・法的課題の整理に努めます。
(3)国際的な発信力の強化:国際個別化医療学会の名に相応しく、海外の諸学会との連携を密にし、日本発の知見を世界へ発信するとともに、グローバルな視点での標準化をリードします。
今日、医学、医療を取り巻く状況はかつてないスピードで変化しています。これまでの成功体験に安住することなく、いかにして「持続可能な学会運営」と「革新的な学術振興」を両立させるかが、我々に課せられた急務です。
私は「開かれた学会」をスローガンに掲げ、産官学の連携を一段と深めるとともに、デジタル化による学会運営の効率化と、会員の皆様への還元価値の最大化を目指します。
伝統を守ることは、変化を止めることではありません。むしろ、本質を維持するためにこそ、大胆な進化が必要であると確信しています。皆様の知恵と力を結集し、共に新たな一歩を踏み出しましょう。
新理事長として、これまでの良き伝統を継承しつつ、時代の要請に応じた柔軟な学会活動を展開してまいる所存です。初代理事長の遺志を引き継ぎ、甚だ微力ではございますが、本学会のさらなる発展のために全力を尽くす所存です。会員の皆様におかれましては、今後とも変わらぬご支援と積極的なご参画をお願い申し上げ、就任の挨拶とさせていただきます。